哺乳類なのに、卵を産む——。そんな生き物の教科書のような存在がハリモグラです。名前に「モグラ」とつき、背中はトゲだらけ。一見どこにでもいそうなのに、じつは日本で会える場所はごくわずかという、とても貴重な動物なのです。
「モグラの仲間?」「ハリネズミと同じ?」と思われがちですが、どちらも間違い。ハリモグラは、あのカモノハシと同じ「単孔類(たんこうるい)」という、哺乳類のなかでもっとも原始的なグループの生き物です。そのカモノハシは、日本の動物園・水族館では実物に会えません。だからこそ、日本で実物の単孔類に会えるハリモグラは、一度は見ておきたい存在なのです。
この記事では2026年7月16日時点で、ハリモグラに会える施設を各所の情報で確認して全3施設にまとめました。あわせて、「卵を産む哺乳類」「ハリネズミとの違い」「長い舌でアリを食べるしくみ」といった、会いに行く前に知っておくと何倍も楽しめる生態も、公式情報にもとづいてやさしく解説します。
この記事の見方
掲載施設は、各園・水族館の公式サイトや飼育動物情報、来館レポートを横断して「2026年7月時点で会えると確認できる施設」に絞っています。展示は個体の体調や施設の都合で予告なく休止されることがあります。また眠っていて姿が見えにくいこともあるため、おでかけ前に各施設の公式サイトで最新情報を必ずご確認ください。
ハリモグラに会える動物園・水族館【2026年最新・全3施設】
まず結論です。2026年7月時点で、日本でハリモグラに会えるのは次の3施設。このうち動物園は上野動物園と東山動植物園の2園だけで、これに水族館の沼津港深海水族館を加えた3か所が、いま実物に会える場所です。数が限られるぶん、「会いに行く」価値のある動物といえます。
| 施設名 | エリア | タイプ | 展示場所 |
|---|---|---|---|
| 恩賜上野動物園 | 東京都 | 動物園 | 西園・小獣館 |
| 東山動植物園 | 愛知県 | 動物園 | 自然動物館(夜行性ゾーン) |
| 沼津港深海水族館 | 静岡県 | 水族館 | シーラカンス・ミュージアム |
※ 2026年7月時点で各施設の公式情報・来館情報により確認したものです。ハリモグラは飼育施設が少なく、状況が変わることもあるため、かならず各施設の最新情報をチェックしてからお出かけください。
恩賜上野動物園(東京都)
東京都心でハリモグラに会えるのが恩賜上野動物園です。展示場所は西園の小獣館。小さな哺乳類を集めた館内で、じっくり観察できます。
東京ズーネット(都立動物園の公式サイト)の解説によると、ハリモグラは単孔目(卵生哺乳類)ハリモグラ科の動物で、メスは腹部にできた袋のような部分に卵を1個産み、生まれた子を乳で育てます。体長は40〜55cm、体重2.5〜8kg。主食はアリとシロアリで、長く伸びた鼻の先の小さな口から、ねばねばした長い舌を出して餌をなめとるのが特徴です。夜行性の傾向があり、日中は寝ていることもあるので、動いている姿に出会えたらラッキーです。
| 所在地 | 東京都台東区上野公園9-83 |
| 展示場所 | 西園・小獣館 |
| 公式サイト | 東京ズーネット(恩賜上野動物園) |
上野動物園には、ハリモグラと同じく日本ではここでしか会えない夜行性の珍獣・アイアイもいます。「日本で1園だけ」つながりで、あわせてチェックしてみてください。

東山動植物園(愛知県・名古屋)
中部・東海エリアでハリモグラに会えるのが東山動植物園です。展示場所は自然動物館の夜行性動物ゾーン。公式サイトの「動物園の仲間」でも、ハリモグラは飼育動物として紹介されています。
公式の解説によれば、ハリモグラは学名 Tachyglossus aculeatus、単孔目ハリモグラ科。「ほ乳類ですが卵を産む」と明記されています。「穴掘りがうまく、毛が変化した針を持っていて、危険がせまると針を立ててボール状になり身を守る。アリやシロアリがおもな食べ物」と、その生態がわかりやすくまとめられています。
自然動物館は、1階が夜行性動物、2階が爬虫類・両生類の展示。暗めのフロアで暮らしているので、目が慣れるまで少し待ってからそっと観察するのがコツです。来園者のレポートでも「音に敏感なので、静かに見てあげて」と紹介されています。
| 所在地 | 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70 |
| 展示場所 | 自然動物館(夜行性動物ゾーン) |
| 公式サイト | 東山動植物園 |
東山動植物園の自然動物館のように、夜行性動物は「暗い時間・暗い展示」で本来の姿を見せてくれます。ナイトズーなど、夜に楽しめる動物園・水族館のまとめもどうぞ。

沼津港深海水族館(静岡県)
少し意外な場所でハリモグラに会えるのが、静岡県の沼津港深海水族館(シーラカンス・ミュージアム)です。深海の生き物を集めた水族館ですが、2階の展示エリアに、なぜかハリモグラがいます。
その理由は「進化のカギを握る生き物」というテーマ。この水族館の主役は、太古から姿を変えずに生き続ける「生きた化石」シーラカンスです。哺乳類でありながら卵を産むハリモグラも、進化の系統樹のなかで特別な位置にいる生き物。そのつながりで、シーラカンスと並べて展示されています。来館レポート(2025年時点)でも、シーラカンスの近くでハリモグラに会えたことが報告されています。
沼津港深海水族館は水族館で、ハリモグラは深海生物ではありません。「進化」をテーマにした展示の一員として飼育されています。公式トップには個別の掲載がないため、来館前に最新の展示状況を公式サイトや電話でご確認いただくと安心です。眠っていて丸まっていることも多い動物です。
| 所在地 | 静岡県沼津市千本港町83 |
| 展示場所 | シーラカンス・ミュージアム(2階) |
| 公式サイト | 沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム |
ハリモグラってどんな動物?卵を産む哺乳類「単孔類」のふしぎ
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。ハリモグラは、名前も見た目も「よくいる小動物」のようですが、じつは哺乳類の常識をくつがえす、とても特別な生き物。知るほどに「もう一度会いに行きたい」と思わせてくれる、ふしぎのかたまりなのです。
ふしぎ1:卵を産む哺乳類「単孔類」——カモノハシの仲間
わたしたち哺乳類は、ふつう赤ちゃんを産みます(胎生)。ところがハリモグラは、卵を産む哺乳類なのです。このように卵を産む原始的な哺乳類のグループを「単孔類(単孔目)」と呼び、現在の地球で単孔類に分類されるのは、カモノハシとハリモグラの仲間だけです。
上野動物園の解説によると、ハリモグラのメスはおなかにできた袋のような部分に卵を1個産み、かえった子を乳で育てます。「卵を産むのに、母乳で育てる」——まさに、爬虫類と哺乳類のあいだをつなぐような特徴です。この原始的なつくりこそ、ハリモグラが「生きた化石」的な存在として注目される理由なのです。
卵を産む、数少ない哺乳類のグループ(単孔目)
現生はカモノハシの仲間とハリモグラの仲間だけ
卵を産むのに、かえった子は母乳で育てる
哺乳類のなかでももっとも原始的とされ、進化を考えるうえで重要な存在
ふしぎ2:カモノハシは日本で会えない。だからハリモグラが貴重
同じ単孔類の仲間として有名なのがカモノハシです。ところが——日本の動物園・水族館では、実物のカモノハシは飼育・展示されていません(2026年7月時点)。
理由は大きく2つ。ひとつは、生息地のオーストラリアが国外への持ち出しを厳しく制限していること。もうひとつは、水質や水温、生きた餌など飼育の条件がとても難しく、オーストラリア以外で長く飼うのが困難なことです。三重県の鳥羽水族館では映像で紹介されていますが、実物には会えません。
カモノハシは、日本では実物の飼育・展示例がありません(映像展示のみ)。だからこそ、日本で実物の単孔類に会えるのはハリモグラだけということになります。「卵を産む哺乳類を、この目で見てみたい」——その願いをかなえてくれる貴重な動物なのです。
ふしぎ3:「ハリモグラ」だけど、ハリネズミとは別の仲間
背中がトゲだらけの小動物というと、ハリネズミを思い浮かべる方も多いはず。よく似ていますが、ハリモグラとハリネズミは、分類上まったく別の生き物です。
ハリネズミは、わたしたちと同じように赤ちゃんを産む有胎盤類(真獣類)の仲間。一方のハリモグラは、これまで見てきたとおり卵を産む単孔類(カモノハシの仲間)です。同じ「トゲのある小動物」でも、進化のうえではまったく遠い存在なのです。
では、なぜこんなに似ているのでしょう。これは「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼ばれる現象です。祖先が別々でも、「身を守る」という同じ目的のために、それぞれ独立して背中にトゲを進化させた結果、見た目がそっくりになった——というわけです。「そっくりだけど親戚ではない」。これも、ハリモグラを観察するときの面白いポイントです。
分類:ハリモグラ=単孔類(カモノハシの仲間)/ハリネズミ=有胎盤類
子の産み方:ハリモグラ=卵を産む/ハリネズミ=赤ちゃんを産む
トゲ:どちらも毛が変化したものだが、別々の祖先が独立に獲得(収斂進化)
つまり見た目は似ていても、親戚ではない別の生き物
ふしぎ4:長い舌でアリを食べ、危険には「トゲの球」で身を守る
ハリモグラの食事は、とてもユニークです。上野動物園の解説によると、長く伸びた鼻の先の小さな口から、ねばねばした長い舌を出して、アリやシロアリをなめとります。アリクイのような食べ方をする、単孔類なのです。
身の守り方も個性的。東山動植物園の解説では、危険がせまると背中の針を立て、ボール状に丸まって身を守るとされています。やわらかいおなかを内側に隠し、トゲの球になって外敵をやり過ごすのです。また穴掘りがとても得意で、地面にもぐって身を隠すこともあります。こうした「原始的だけど、ちゃんと理にかなった暮らし方」も、観察の見どころです。
「日本では会える場所が限られる、原始的で不思議な生き物」という点では、ニュージーランドのキーウィも仲間のような存在。日本で会えるのか、現在の飼育状況をまとめた記事もどうぞ。

動物園・水族館でハリモグラを楽しむ3つのコツ
コツ1:夜行性=日中は寝ていることも。動く姿は「運」と心得る
ハリモグラは夜行性の傾向があり、日中は寝ていて丸まっていることも少なくありません。実際、どの施設の来館レポートでも「寝ていて姿が見えなかった」という声が見られます。「動いている姿に会えたらラッキー」くらいの気持ちで、開園直後や、比較的活発になりやすい時間帯をねらってみましょう。
コツ2:暗い展示は「目を慣らして」からそっと見る
東山動植物園の自然動物館のように、夜行性ゾーンは照明が落としてあります。入ってすぐは何も見えませんが、30秒ほど待って目を慣らすと、トゲの生えた背中や、もそもそ動く姿が浮かび上がってきます。ガラスに顔を近づけて、地面や物陰までじっくり探してみてください。
コツ3:物音・振動は苦手。静かに観察する
ハリモグラは音や振動にとても敏感です。ガラスを叩いたり大きな声を出したりすると、警戒して丸まったり隠れたりしてしまいます。小さなお子さんと一緒のときは「そーっと、静かに見ようね」と声をかけてあげると、落ち着いた自然な姿を観察しやすくなります。これは、動物にとってもやさしい見学マナーです。
ハリモグラと一緒に楽しみたい、会える場所が限られる動物たち
せっかく足を運ぶなら、ハリモグラだけで帰るのはもったいないところ。「オーストラリア生まれ」「日本で会える場所が少ない」という点で共通する、ほかのふしぎな動物たちもチェックしておきましょう。
たとえば、オーストラリア生まれの有袋類クオッカ。「世界一幸せな動物」とも呼ばれ、日本ではある1園でしか会えません。ハリモグラと同じ「オーストラリア×ここだけ」つながりの動物です。

同じくオーストラリア生まれで、ずんぐりした姿が人気のウォンバットも、日本では2か所でしか会えない希少な有袋類。会える場所と飼育状況をまとめた記事もあわせてどうぞ。

ハリモグラに関するよくある質問
- Qハリモグラに会える動物園はどこですか?
- A
2026年7月時点で、日本の動物園でハリモグラに会えるのは恩賜上野動物園(東京都)と東山動植物園(愛知県)の2園です。これに水族館の沼津港深海水族館(静岡県)を加えた全3施設で会えます。
展示は個体の体調や施設の都合で休止されることがあり、眠っていて見えにくいこともあるため、おでかけ前に各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。
- Qハリモグラとハリネズミは何が違うのですか?
- A
分類がまったく違います。ハリモグラは卵を産む「単孔類」でカモノハシの仲間、ハリネズミは赤ちゃんを産む「有胎盤類」の仲間です。
どちらも背中にトゲがありますが、これは別々の祖先が独立して同じような姿に進化した「収斂進化」の結果で、見た目は似ていても親戚ではありません。
- Qカモノハシは日本の動物園で見られますか?
- A
2026年7月時点で、日本の動物園・水族館ではカモノハシの実物は飼育・展示されていません。生息地オーストラリアの持ち出し規制と、飼育の難しさが理由です。
三重県の鳥羽水族館では映像で紹介されていますが、実物には会えません。そのため、日本で実物の単孔類に会えるのはハリモグラだけということになります。
- Qハリモグラは本当に卵を産むのですか?
- A
はい。ハリモグラは哺乳類でありながら卵を産む、数少ない「単孔類」の一種です。上野動物園の解説によると、メスはおなかにできた袋のような部分に卵を1個産み、かえった子を母乳で育てます。
- Qハリモグラは何を食べていますか?
- A
おもな食べ物はアリやシロアリです。長く伸びた鼻の先の小さな口から、ねばねばした長い舌を出して餌をなめとります。穴掘りが得意で、危険がせまると背中の針を立ててボール状に丸まり身を守ります。
まとめ:日本で会える「卵を産む哺乳類」に会いに行こう
会えるのは全3施設(2026年7月時点)——動物園は上野動物園・東山動植物園の2園、加えて水族館の沼津港深海水族館
ハリモグラは卵を産む哺乳類「単孔類」。カモノハシの仲間で、哺乳類のなかでも原始的
カモノハシは日本では実物に会えないため、実物の単孔類に会えるのはハリモグラだけ
ハリネズミとは別の生き物。トゲが似ているのは「収斂進化」による偶然
見学は夜行性ゆえ「動く姿は運」。暗い展示は目を慣らし、静かに観察するのがコツ
見た目は地味かもしれませんが、ハリモグラは「哺乳類とはなにか」という問いをそっと揺さぶってくれる、奥の深い生き物です。会える場所が限られるぶん、出会えたときの感動もひとしお。お近くの施設で会えるなら、ぜひその小さな「生きた化石」に会いに行ってみてください。
※ 本記事の情報は2026年7月16日時点で各施設の公式サイト・来館情報等により確認したものです。展示状況・所在地・開館情報は変更される場合があります。おでかけ前に公式サイトで最新情報をご確認ください。


