ウサギのように長い耳、ブタのように突き出た鼻、カンガルーを思わせる太いしっぽ——一度見たら忘れられない、ちぐはぐで愛らしい姿。それがツチブタです。アフリカのサバンナで夜な夜な地面を掘り、長い舌でアリやシロアリをなめとって暮らす、知る人ぞ知る珍獣です。
名前に「ブタ」とついていますが、ブタ(イノシシの仲間)とはまったく別のグループ。それどころかツチブタは、近い仲間が一種もいない「たった1種」だけで一つのグループ(管歯目ツチブタ科)をつくっている、進化のうえでもとても孤独で貴重な動物なのです。
この記事では2026年7月19日時点で、日本国内でツチブタに会える動物園を各園の公式情報で確認し、4施設にまとめました。各園の個体情報・展示場所・料金・アクセスに加えて、「会いに行く前に知っておくと10倍楽しめる」ツチブタの生態、そしてかつて西日本で会えた姫路市立動物園の今もあわせて正直にお伝えします。
この記事の見方
飼育園館と個体情報は各動物園の公式サイト・公式ブログ・自治体の報道発表で、料金・開園時間・アクセスは各園の公式(総合案内)ページで確認しています(すべて2026年7月19日時点)。ツチブタは夜行性で、体調や工事によって展示が予告なく中止されることがあります。おでかけ前に必ず各園の公式サイトで最新情報をご確認ください。
この記事の「ツチブタ」は、管歯目(かんしもく)ツチブタ科ツチブタ属に分類される現生(いま生きている)ただ1種の動物(学名 Orycteropus afer)を指します。
名前は似ていますが、家畜のブタ(偶蹄目イノシシ科)とはまったく別のグループです。アリやシロアリを食べる点はアリクイやセンザンコウと通じますが、それらとも別の系統で、ツチブタは「近縁種のいない、1目1科1属1種の動物」です。
ツチブタに会える動物園は日本で4施設【2026年7月時点】
まず結論です。2026年7月19日時点で、日本国内でツチブタの飼育・展示が確認できるのは次の4施設です。東日本では東京・静岡、そして中部の愛知に2園。数はけっして多くありませんが、いずれも見ごたえのある展示です。
| 施設名 | エリア | 展示場所 |
|---|---|---|
| 恩賜上野動物園 | 東京都 | 小獣館(地下) |
| 静岡市立日本平動物園 | 静岡県 | 夜行性動物館 |
| のんほいパーク(豊橋総合動植物公園) | 愛知県 | 夜行性動物館 |
| 東山動植物園 | 愛知県 | 自然動物館(夜行性コーナー) |
※ 2026年7月19日時点で各園の公式情報により確認したものです。ツチブタは夜行性のため、展示室が暗くつくられていたり、個体が寝ていて見えにくいこともあります。
恩賜上野動物園(東京都)
東京都心でツチブタに会えるのが恩賜上野動物園です。展示場所は小獣館の地下。夜行性動物を集めたフロアで、暗く落とした照明の中、地面を掘ろうとするツチブタのようすを観察できます。
上野動物園はツチブタの繁殖にも取り組んできた園です。2025年10月には、当園で暮らしていたメスのツチブタを、後述する静岡の日本平動物園へと送り出しました。国内でツチブタを飼育する数少ない園どうしが、個体をやり取りしながら国内の飼育をつないでいるわけです。
| 所在地 | 東京都台東区上野公園9-83 |
| 展示場所 | 小獣館(地下) |
| 開園時間 | 9:30〜17:00(入園券の販売は閉園1時間前まで) |
| 休園日 | 月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)/年末年始(12月29日〜1月1日) |
| 入園料 | 一般600円/65歳以上300円/中学生200円/小学6年生まで無料(都内在住・在学の中学生は無料・証明書が必要) |
| アクセス | JR上野駅「公園口」から徒歩5分/京成上野駅から徒歩4分 ほか |
※ 料金・時間は2026年7月19日に上野動物園公式サイトで確認した内容です。上野動物園には、卵を産む哺乳類として知られるハリモグラなど、ほかにも珍しい動物がそろっています。

静岡市立日本平動物園(静岡県)
静岡でツチブタに会えるのが静岡市立日本平動物園です。展示場所は夜行性動物館。夜の環境を再現した館内で、活動するツチブタの姿を狙えます。
日本平動物園のツチブタは、いま世代交代の時期を迎えています。長く暮らしていたメスの「フラハ」が2025年1月27日に亡くなりましたが、その後2025年10月に上野動物園からメスのツチブタが来園し、10月29日から一般公開されました(静岡市の報道発表・日本平動物園の公式ニュース)。オスの「ゴロファ」とあわせて、あらためてペアでの飼育が続いています。
| 所在地 | 静岡県静岡市駿河区池田1767-6 |
| 展示場所 | 夜行性動物館 |
| 開園時間 | 9:00〜16:30(入園は16:00まで) |
| 休園日 | 月曜日(祝日の場合は翌平日)/年末年始 |
| 入園料 | 一般(高校生以上)620円/小・中学生150円/未就学児無料 |
| アクセス | JR東静岡駅南口からバス約10分+徒歩約5分/JR静岡駅北口からバス約25分 |
※ 料金・時間・個体情報は2026年7月19日に日本平動物園公式サイト・静岡市の報道発表で確認した内容です。
のんほいパーク(愛知県・豊橋)
愛知県の東三河でツチブタに会えるのが、豊橋市ののんほいパーク(豊橋総合動植物公園)です。展示場所は夜行性動物館。動物園・植物園・自然史博物館・遊園地がそろう総合公園で、一日たっぷり楽しめます。
のんほいパークではメスの「あゆみ」とオスの「カケル」のペアを飼育しています。公式サイトによると、あゆみは2011年3月6日生まれで、なんと後述する東山動植物園の出身。「かなりのお転婆で、飼育員が部屋に入ると後ろ足だけで立ち上がってもたれかかってくる」と紹介されています。カケルは2023年に南アフリカで生まれ、2025年5月23日にやってきた新しい仲間。のんびりした性格だそうです。
| 所在地 | 愛知県豊橋市大岩町字大穴1-238 |
| 展示場所 | 夜行性動物館 |
| 開園時間 | 9:00〜16:30(入園は16:00まで) |
| 休園日 | 月曜日(祝日の場合は翌平日)/年末年始 |
| 入園料 | 大人(高校生以上)600円/小・中学生100円/未就学児無料 |
| アクセス | JR二川(ふたがわ)駅南口から徒歩約6分 |
※ 料金・時間・個体情報は2026年7月19日にのんほいパーク公式サイトで確認した内容です。
東山動植物園(愛知県・名古屋)
名古屋でツチブタに会えるのが東山動植物園です。展示場所は自然動物館の1階、夜行性コーナー。両生・爬虫類や夜行性動物を集めた館内で、ツチブタを観察できます。
東山動植物園はツチブタの繁殖に成功した実績のある園です。2011年には赤ちゃんが誕生・公開され、その1頭が前述の「あゆみ」として現在はのんほいパークで暮らしています。2025年8月にはテレビ番組でも東山のツチブタが取り上げられるなど、いまも人気の動物です。なお、飼育している個体の名前や最新の状況は入れ替わることがあるため、おでかけ前に東山動植物園の公式サイト・公式ブログでご確認ください。
| 所在地 | 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70 |
| 展示場所 | 自然動物館1階(夜行性コーナー) |
| 開園時間 | 9:00〜16:50(入園券の発売は16:30まで) |
| 休園日 | 月曜日(祝日の場合は直後の平日)/年末年始(12月29日〜1月1日) |
| 入園料 | 高校生以上500円/中学生以下無料(名古屋市在住の65歳以上は100円・証明書が必要) |
| アクセス | 地下鉄東山線「東山公園」駅3番出口から徒歩3分/「星ヶ丘」駅から徒歩7分 |
※ 料金・時間は2026年7月19日に東山動植物園公式サイトで確認した内容です。東山動植物園には、ツチブタと同じく会える場所がとても限られる珍獣ラーテルもいます。

ツチブタってどんな動物?「1種だけ」の珍しさと夜の暮らし
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。ツチブタは見た目のインパクトばかり注目されがちですが、生き物としての立ち位置も、暮らし方も、とてもユニークな動物です。
近い仲間が一種もいない——1目1科1属1種の動物
ツチブタは管歯目(かんしもく)ツチブタ科ツチブタ属に分類されます。このグループには、いま生きている動物としてはツチブタ1種しかいません。つまりツチブタは「目」というかなり大きな分類の階級を、たった1種でまるごと占めているのです。
私たちになじみのある動物でたとえると、ネコにはトラやライオンといった仲間(ネコ科)が、イヌにはオオカミやキツネといった仲間(イヌ科)がいます。ところがツチブタには、そうした「いとこ」にあたる現生の動物がいません。進化の歴史の中で、たった1種だけが生き残ってきた——そう考えると、動物園のガラス越しに見るツチブタが、少し特別な存在に見えてきます。
「アリやシロアリを食べる」という点では、アリクイやセンザンコウとよく似ています。しかしこれらは別々のグループで、たまたま同じような食べ方に進化しただけ(収れん進化)。ツチブタとアリクイは、見た目や暮らしが似ていても近い親戚ではありません。
「ブタ」ではない——名前の由来と長い舌
ツチブタという名前は、鼻先がブタに似ていることと、土(つち)を掘って暮らすことに由来するといわれます。けれども家畜のブタ(偶蹄目イノシシ科)とは、分類上まったく別の動物です。
ツチブタの主食はアリとシロアリ。鋭いツメで硬いアリ塚やシロアリの巣を掘り崩し、長くねばりのある舌を差し込んで、中の虫をなめとって食べます。一晩に数万匹もの虫を食べるといわれ、アフリカのサバンナでは「歩く害虫駆除係」として生態系を支えている存在でもあります。
夜行性で穴掘りの名手——ツチブタが掘る巣穴は多くの動物のすみかに
ツチブタは基本的に夜行性で、昼間は自分で掘った巣穴の中で眠り、夜になると活動を始めます。動物園の展示室が暗くつくられているのは、このためです。
そして特筆すべきが、その穴掘りの速さ。短時間で自分の体がすっぽり入る穴を掘ってしまう名人です。ツチブタが掘って使わなくなった巣穴は、ほかの動物(イボイノシシやヤマアラシ、鳥など)のすみかとしても再利用され、サバンナの「住宅供給者」のような役割も果たしています。
保全状況については、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでLC(低懸念)に分類されています。アフリカに広く分布しているため、いますぐ絶滅が心配される状況ではありません。とはいえ、日本の動物園で会える個体はごくわずか。身近な珍獣であることに変わりはありません。
「夜行性で、暗い展示室にいる動物をもっと活発な状態で見たい」という方には、夜間開園を行っている動物園という選択肢もあります。

かつて西日本でツチブタに会えた「姫路市立動物園」のいま
ツチブタについて調べると、兵庫県の姫路市立動物園の名前を見かけることがあります。これは過去の情報で、2026年7月時点では姫路市立動物園にツチブタはいません。「西日本でツチブタに会える」と紹介しているページもありますが、現在は当てはまらないので注意してください。
姫路市立動物園はかつて、西日本で唯一ツチブタを飼育していた園でした。しかし報道によると、最後まで飼育されていたツチブタが2020年5月に肺の病気(肺膿瘍)で亡くなり、それ以前に暮らしていたもう1頭もすでに亡くなっていたため、この時点で姫路市立動物園のツチブタはいなくなりました。
こうした経緯から、2026年7月時点で関西・西日本でツチブタに会える動物園は確認できません。ツチブタに会いたい場合は、この記事で紹介した上野・日本平・のんほい・東山の4施設のいずれかを目指すことになります。
動物園でツチブタを楽しむ3つのコツ
コツ1:暗い展示室では、目が慣れるまで待つ
ツチブタは夜行性のため、展示室は暗くつくられていることが多いです。明るい場所からいきなり入ると、しばらく何も見えません。ここで「いないな」とあきらめて出てしまうのが、いちばんもったいないパターン。ガラスの前で数分じっと待つと、目が慣れて枝や地面の輪郭が見え、ツチブタの姿が浮かび上がってきます。
コツ2:長い耳と鼻、太いしっぽに注目する
ツチブタは、動物のいろいろな特徴を「いいとこ取り」したような姿をしています。ウサギのように長い耳、ブタのような鼻、カンガルーのような太いしっぽ、そして地面を掘るための頑丈なツメ。一つひとつのパーツが「なんのためにあるのか」を考えながら見ると、ツチブタの暮らしぶりが立体的に見えてきます。
コツ3:静かに、そっと観察する
夜行性で聴覚のするどい動物は、大きな物音や振動を嫌います。ガラスを叩いたり大声を出したりせず、静かに見守るのがマナー。小さなお子さんと一緒なら、入る前に「ここは静かに見る場所だよ」と伝えておくとスムーズです。暗い展示室ではフラッシュ撮影が禁止されているのが一般的なので、掲示に従いましょう。
ツチブタと一緒に楽しみたい、珍獣・夜行性の動物たち
せっかく足を運ぶなら、ツチブタだけで帰るのはもったいないところ。「会える場所が限られる」「夜行性」「見た目がユニーク」という点で共通する、ほかの珍しい動物たちもチェックしておきましょう。
たとえばアイアイ。童謡で名前だけは有名ですが、実物は夜行性で、細長い中指で虫を釣り上げて食べる不思議な動物です。ツチブタと同じく、日本で会える場所がとても限られています。

見た目のインパクトならハダカデバネズミも負けていません。毛のないしわしわの体に大きな出っ歯、そしてアリやハチのような社会をつくる真社会性の持ち主。同じ「奇妙で面白い動物」好きにはたまらない存在です。

げっ歯類の珍獣グンディもおすすめ。会える動物園が限られる点はツチブタと共通で、「マイナーだけど一度見ると忘れられない動物」を集めてめぐるのも、動物園の楽しみ方のひとつです。

ツチブタに会える動物園に関するよくある質問
- Qツチブタに会える動物園はどこですか?
- A
2026年7月19日時点で、日本国内でツチブタの飼育・展示が確認できるのは、恩賜上野動物園(東京都)、静岡市立日本平動物園(静岡県)、のんほいパーク(愛知県・豊橋)、東山動植物園(愛知県・名古屋)の4施設です。
ツチブタは夜行性で、体調や施設の都合で展示が中止されることもあるため、おでかけ前に各園の公式サイトで最新情報をご確認ください。
- Q関西・西日本でツチブタに会えますか?
- A
2026年7月時点で、関西・西日本でツチブタに会える動物園は確認できません。かつては兵庫県の姫路市立動物園が西日本で唯一ツチブタを飼育していましたが、飼育していたオスが2020年5月に亡くなって以降、同園にツチブタはいません。
ツチブタに会いたい場合は、上野・日本平・のんほい・東山の4施設のいずれかがもっとも近い選択肢になります。
- Qツチブタは「ブタ」の仲間ですか?
- A
いいえ。名前に「ブタ」とついていますが、家畜のブタ(偶蹄目イノシシ科)とはまったく別のグループです。ツチブタは管歯目(かんしもく)ツチブタ科に分類され、いま生きている動物ではツチブタ1種だけが属する、近縁種のいない珍しい動物です。
アリやシロアリを食べる点はアリクイやセンザンコウと似ていますが、それらとも別の系統です。
- Qツチブタは何を食べますか?
- A
主にアリとシロアリを食べます。鋭いツメでアリ塚やシロアリの巣を掘り崩し、長くねばりのある舌を差し込んで、中の虫をなめとって食べます。一晩に数万匹もの虫を食べるといわれています。
- Q動物園でツチブタが見当たらないのはなぜですか?
- A
ツチブタは夜行性のため、動物園では展示室が暗くつくられていることが多く、個体が物陰や巣穴で寝ていて見えにくいことがあります。暗い場所に入ってすぐは目が慣れず見えないので、ガラスの前で数分待ってみるのがおすすめです。
また、個体の体調や施設の都合で展示が中止されている場合もあります。確実に見たいときは、来園前に公式サイトのお知らせをご確認ください。
まとめ:日本で4施設だけ、「1種だけの珍獣」に会いに行こう
ツチブタに会えるのは全国4施設(2026年7月19日時点)——上野/日本平/のんほい/東山
関西・西日本では会えない。西日本唯一だった姫路市立動物園は2020年にツチブタの飼育を終えた
ツチブタは1目1科1属1種。近い仲間が一種もいない、進化のうえでも貴重な動物
名前は「ブタ」でも別の動物。夜行性で、長い舌でアリやシロアリを食べる穴掘りの名人
見学は「暗さに目が慣れるまで数分待つ」のがコツ。夜行性なので静かにそっと観察しよう
童謡やイラストで名前だけは知られていても、実物のツチブタに会ったことがある人は多くありません。ちぐはぐで愛らしい姿、そして「たった1種だけ」という進化の物語を知ってから会いに行けば、暗い展示室で地面を掘るツチブタの見え方は、きっと少し変わります。お近くの園で会えるなら、ぜひ足を運んでみてください。
※ 本記事の情報は2026年7月19日時点で各園の公式サイト・報道発表等により確認したものです。展示状況・個体・料金・開園時間は変更される場合があります。おでかけ前に公式サイトで最新情報をご確認ください。


