羽を広げると淡いピンク色(朱鷺色)に染まる、優雅な鳥トキ。学名を Nipponia nippon といい、その名のとおり日本を象徴する鳥として知られています。一度は日本の空から姿を消しながら、環境省と全国の施設の力でよみがえった、いわば「復活の物語」を背負った特別天然記念物です。この記事を読んでいる方の多くは、「そのトキに、実際にどこへ行けば会えるの?」を知りたいのではないでしょうか。
本記事では、2026年7月16日時点で生きたトキを自分の目で観覧できる全国の施設を、環境省や各施設の公式情報をもとにまとめました。じつはトキは「飼育している施設」と「会える(観覧できる)施設」がイコールではありません。だからこそ、どこで・どう会いに行けばいいかを、一次情報にもとづいて整理します。
トキは、環境省の分散飼育(生息域外保全)によって全国6か所(佐渡トキ保護センターと5つの分散飼育施設)で守られています。このうち、一般に公開された観覧設備があり、生きたトキを自分の目で見られる「会える施設」は全国4か所です。すなわち、佐渡・トキの森公園(新潟県佐渡市)/いしかわ動物園(石川県能美市)/出雲市トキ公開施設(島根県出雲市)/長岡市トキと自然の学習館 トキみ〜て(新潟県長岡市)の4か所。多摩動物公園(東京都日野市)はトキを飼育していますが、環境省の飼育方針により非公開のため会えません。公開個体は入れ替わるので、お出かけ前に各施設の最新情報を必ず確認してください。
まず整理:トキに「会える施設」とは?飼育施設と観覧施設は別
トキを探すときにいちばん間違えやすいのが、「トキを飼育している施設=会える施設」だと思い込んでしまうことです。トキは、環境省が進める「分散飼育(生息域外保全)」の対象で、感染症や災害で一度に失われるリスクを避けるため、複数の施設に分かれて飼われています。ところが、これらの施設の多くは繁殖と野生復帰を最優先とするため、来園者が観覧できるとは限らないのです。
そこでこの記事では、「会える施設」を「一般に公開された観覧設備があり、生きたトキを自分の目で見られる施設」と定義します。この定義でしぼると、トキを飼育している全国6か所のうち、会えるのは4か所になります。たとえば佐渡の場合、飼育の中核である「佐渡トキ保護センター」そのものは非公開で、隣接する「トキの森公園」内の観覧施設「トキふれあいプラザ」で見学するかたちです。飼育している場所と、会える場所が異なる好例といえます。
絶滅のおそれがある生きものを、本来の生息地の外(動物園などの施設)でも飼育・繁殖して守る取り組みを「生息域外保全」といいます。トキの場合、環境省が佐渡トキ保護センターを中核に、多摩動物公園・いしかわ動物園・出雲市トキ分散飼育センター・長岡市トキ分散飼育センター・佐渡市トキふれあいプラザへ個体を分けて飼育しています。これが「分散飼育」です。私たちがトキに会えるのは、こうした保全活動のおかげなのです。
次の表に、トキを飼育している施設と、観覧できるかどうかを整理しました。
| 施設 | エリア | 会える(観覧) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 佐渡・トキの森公園(トキふれあいプラザ) | 新潟・佐渡 | ◯ | 飼育中核の保護センターは非公開、隣接の観覧施設で見学 |
| いしかわ動物園(トキ里山館) | 石川・能美 | ◯ | 日本の動物園で唯一トキを公開(2016年〜) |
| 出雲市トキ公開施設 | 島根・出雲 | ◯ | 常時4羽を公開 |
| 長岡市トキと自然の学習館 トキみ〜て | 新潟・長岡 | ◯ | 観覧棟で2018年8月から一般公開 |
| 多摩動物公園 | 東京・日野 | × | 環境省の飼育方針により非公開 |
| 佐渡トキ保護センター(本体) | 新潟・佐渡 | × | 非公開。観覧はトキの森公園で |
トキに会える施設4か所【エリア別】
ここからは、生きたトキに会える4施設を紹介します。開館時間や料金は変わることがあるため、実際に出かける前には各施設の公式サイトで最新情報を確認してください。
佐渡・トキの森公園(新潟県佐渡市)
トキに会うなら、まず訪れたいのがトキの「ふるさと」佐渡です。飼育・繁殖の中核である佐渡トキ保護センターは非公開ですが、それに隣接する「トキの森公園」には、ケージ内のトキを間近に観察できる観覧施設「トキふれあいプラザ」と、保護増殖や野生復帰の歩みを学べる「トキ資料展示館」があります。佐渡市の公式サイトによると、所在地は新潟県佐渡市新穂長畝383-2。開館時間は8時30分〜17時(入館締切16時30分)、休館日は毎週月曜(3〜11月は無休)と年末年始です。協力費は大人(高校生以上)500円、小人(小中学生)200円(令和7年4月1日改正)となっています。
佐渡は、飼育下のトキだけでなく、野生に放されたトキが実際に暮らしている場所でもあります。運がよければ、田んぼの上や空を舞う野生のトキに出会えることも。まずはトキの森公園でじっくり姿を目に焼き付けてから、島内をめぐるのがおすすめです。
いしかわ動物園(石川県能美市)
日本の「動物園」でトキに会えるのが、石川県能美市のいしかわ動物園です。公式サイトによると、園内の「トキ里山館」は2016年に完成し、トキの一般公開を行っています。トキが落ち着いて過ごせるよう、館内と観覧通路の明暗差を利用して、トキ側からは人が見えにくい工夫がされており、来園者は30センチメートルもない近さでトキを観察できます。2026年7月時点で、「動物園」としてトキを公開しているのはいしかわ動物園のみです(後述する出雲・長岡の公開施設は、動物園ではなく市が運営する飼育・観覧施設です)。繁殖と野生復帰にも力を入れており、公式サイトによると、2019年10月までに同園生まれのトキ通算50羽が放鳥され、その後も放鳥は続いています。
公開している個体や羽数は、佐渡との移送などにより時期によって変わります。狙っている個体がいる場合はとくに、事前に公式サイトやSNSで最新の展示状況を確認してからお出かけください。トキと同じく希少な生きものへの関心が高まる園なので、ほかの絶滅危惧種とあわせて楽しむのもよいでしょう。

出雲市トキ公開施設(島根県出雲市)
本州の西、島根県出雲市にもトキに会える施設があります。出雲市トキ分散飼育センターに併設された「出雲市トキ公開施設」です。公式サイトによると、常時4羽のトキを公開しており、開館時間は3〜11月が10時〜16時30分、12〜2月が10時〜16時。休館日は毎週火曜日(祝日と重なった場合は翌日)と年末年始(12月29日〜1月3日)です。入場は無料ですが、施設のある「しまね花の郷」の入園料が別途必要になります。所在地は島根県出雲市西新町2丁目1039-3です。
出雲市トキ分散飼育センターでは、その年に生まれた幼鳥を毎年秋ごろに期間限定で公開することもあります。花の名所とあわせて、家族でゆっくり過ごしながらトキを観察できるのが魅力です。西日本でトキに会いたい人には、いちばん行きやすい施設といえるでしょう。
長岡市トキと自然の学習館 トキみ〜て(新潟県長岡市)
同じ新潟県内、長岡市の寺泊エリアにあるのが「長岡市トキと自然の学習館」です。長岡市の公式サイトによると、隣接する長岡市トキ分散飼育センターが平成23年(2011年)10月11日に佐渡トキ保護センターから4羽(2つがい)のトキを受け入れて分散飼育を始めたことをきっかけに開設された施設で、平成30年(2018年)8月には観覧棟「トキみ〜て」がオープンしました。ここで、飼育されているトキの様子をガラス越しに間近で見学できます。所在地は新潟県長岡市寺泊夏戸です。
観覧できる日時は季節や施設の運営状況によって変わることがあるため、訪問前に長岡市の公式サイトで開館日・開館時間を確認しておくと安心です。佐渡へ渡るのが難しい人でも、本州側でトキに会える貴重な施設のひとつです。
東京都日野市の多摩動物公園は、2007年12月からトキを飼育し、毎年のように繁殖に成功している重要な施設です。しかし東京都の発表によると、多摩動物公園のトキは「環境省の飼育方針により非公開で飼育しており、ご覧いただくことはできません」。2025年6月24日時点で13羽を飼育していますが、来園しても観覧はできない点に注意してください。多摩動物公園には会えるほかの動物もたくさんいます。東京の動物園めぐりはこちらの記事も参考にどうぞ。

トキってどんな鳥?一度は途絶えた「復活の鳥」
会いに行く前に、トキがどんな鳥なのかを知っておくと、観察がぐっと深く楽しくなります。トキは、ただの珍しい鳥ではありません。日本人が一度は失いかけ、必死の努力でよみがえらせた、特別な歴史を背負った鳥なのです。
学名は Nipponia nippon、名前じゅうに「日本」
トキは、環境省の分類ではペリカン目トキ科の鳥で、学名を Nipponia nippon といいます。属名(Nipponia)も種小名(nippon)も「日本」に由来し、名前じゅうに日本が刻まれた、まさに日本を象徴する鳥です。全身は白く、顔の皮膚は赤色。羽を広げると、風切羽の裏側などがほんのり淡いピンク色に見え、この色は「朱鷺色(ときいろ)」と呼ばれてきました。その美しさから、かつては羽毛をとる目的で乱獲され、明治時代に激減してしまいます。
その希少さから、環境省によると、トキは昭和27年(1952年)に特別天然記念物に指定され、平成5年(1993年)には種の保存法にもとづく国内希少野生動植物種に指定されています。国として、最大級の保護をかけて守られてきた鳥だといえます。
同じく種の保存法にもとづく国内希少野生動植物種として守られている、対馬だけにすむネコ・ツシマヤマネコの記事もあわせてどうぞ。

2003年、日本生まれの野生のトキが途絶えた
保護の努力もむなしく、日本の野生のトキは数を減らし続けました。そして環境省によると、平成15年(2003年)、日本の野生生まれの最後のトキ「キン」が死亡します。これによって、日本の空から日本生まれの野生のトキは姿を消しました。「日本産のトキは絶滅した」と語られるのは、この出来事を指しています。とてもセンシティブで、重い歴史です。
ただし、物語はここで終わりませんでした。日本は、トキがまだ生き残っていた中国に協力を求めます。環境省によると、昭和60年(1985年)に中国からの個体の借受けが始まり、平成11年(1999年)には中国から「友友(ヨウヨウ)」「洋洋(ヤンヤン)」のつがいが贈られました。この中国由来のトキをもとに、日本での人工繁殖が本格的に進み、絶やしかけた命がふたたびつながっていったのです。いま日本で見られるトキは、この中国産の個体を礎に、佐渡や各地で繁殖を重ねてきたトキたちです。
佐渡、そして本州へ——放鳥で広がる空
飼育下で数を増やしたトキは、いよいよ野生へと戻されていきます。環境省によると、平成20年(2008年)、佐渡島において野生復帰のための放鳥が始まりました。以来、佐渡の空にはトキが舞う光景が戻り、野生下で自然にヒナが巣立つまでになっています。さらに令和8年(2026年)5月31日には、石川県羽咋市で本州初となるトキの放鳥が実施されました。トキが暮らせる空は、佐渡から本州へと着実に広がっているのです。動物園や公開施設でトキに会うことは、この壮大な復活の物語の「いま」を、自分の目で確かめることでもあります。
希少な鳥をもっと知りたい方は、猛禽の一種で人気のヘビクイワシを紹介したこちらの記事もどうぞ。

トキに会いに行くときの3つのコツ
1. 公開状況と開館日を事前に確認する
もっとも大切なポイントです。トキは飼育していても、繁殖や体調管理、佐渡との移送のために公開・非公開が入れ替わります。羽数も時期によって変わります。せっかく遠方から向かったのに会えなかった、とならないよう、行きたい施設の公式サイトや公式SNSで、最新の公開状況と開館日・開館時間を確認してからお出かけください。とくに冬季は開館時間が短くなる施設もあります。
2. 朝の時間帯や繁殖期をねらう
トキの活発な姿を見たいなら、比較的すずしく活動が見られる開園直後の時間帯がねらい目です。また、春の繁殖期には、羽の色が濃いグレーに変化する(婚姻色)など、季節ならではの姿を観察できることもあります。時期を変えて何度か訪れると、トキの違った表情に出会えるかもしれません。
3. 佐渡の野生トキは「そっと見守る」
佐渡では、放鳥された野生のトキが田んぼや里山で暮らしています。空を舞う姿や、田んぼでエサをついばむ姿に出会えることもありますが、野生のトキはとてもデリケートです。近づきすぎたり、大きな音を出したり、エサをやったりする行為は、トキの生活や繁殖の妨げになります。野生の個体は、車を降りずに離れた場所から静かに観察し、そっと見守ることを心がけましょう。確実にじっくり観察したいときは、トキの森公園などの公開施設を利用するのが安心です。
この記事の施設情報・公開状況・料金は、環境省「トキ」ページと各施設の公式情報にもとづく2026年7月16日時点のものです。トキは公開・非公開が変わりやすく、羽数や開館時間も変動します。遠方から向かう場合は、必ず当日までに各施設の公式サイト・公式SNSで最新情報を確認してからお出かけください。
トキに会える施設のよくある質問
- Qトキに会える施設はどこですか?
- A
2026年7月16日時点で、生きたトキを一般に観覧できるのは全国4か所です。佐渡・トキの森公園(新潟県佐渡市)、いしかわ動物園(石川県能美市)、出雲市トキ公開施設(島根県出雲市)、長岡市トキと自然の学習館 トキみ〜て(新潟県長岡市)です。多摩動物公園(東京都日野市)はトキを飼育していますが、環境省の飼育方針により非公開のため会えません。公開状況は変わるため、訪問前に各施設の最新情報をご確認ください。
- Qトキは動物園で見られますか?
- A
日本の動物園でトキを一般公開しているのは、いしかわ動物園(石川県能美市)です。園内の「トキ里山館」で2016年から公開しています。そのほかは、佐渡のトキの森公園、出雲市トキ公開施設、長岡市トキと自然の学習館(トキみ〜て)といった、環境省の分散飼育に関わる専門施設で観覧できます。
- Qトキは絶滅したのではないのですか?
- A
環境省によると、平成15年(2003年)に日本の野生生まれの最後のトキ「キン」が死亡し、日本産(日本生まれ)の野生のトキは途絶えました。ただし、中国から譲り受けた個体をもとに人工繁殖と野生復帰が進められ、現在は佐渡などでトキが飼育・繁殖されています。いま日本で見られるトキは、この中国由来の個体を礎に増やされてきたトキたちです。
- Q佐渡では野生のトキも見られますか?
- A
佐渡では、平成20年(2008年)から野生復帰のための放鳥が行われ、放鳥されたトキが野生で暮らしています。田んぼや空でトキを見かけることもありますが、野生の個体はデリケートなので、近づかず、離れた場所からそっと見守ってください。確実にじっくり観察したいときは、トキの森公園の観覧施設を利用するのがおすすめです。
- Qトキの学名の由来は何ですか?
- A
トキの学名は Nipponia nippon で、属名(Nipponia)も種小名(nippon)も「日本」に由来します。名前じゅうに日本が刻まれた、日本を象徴する鳥です。環境省の分類ではペリカン目トキ科に属します。
まとめ
トキは、学名 Nipponia nippon の名のとおり日本を象徴する鳥でありながら、一度は日本生まれの野生個体が途絶えるという重い歴史を背負っています。中国からの協力と、環境省・全国の施設による分散飼育のおかげで、いまふたたび佐渡や本州の空へと羽ばたきつつあります。2026年7月16日時点で、その生きた姿に会えるのは、佐渡・トキの森公園、いしかわ動物園、出雲市トキ公開施設、長岡市トキと自然の学習館(トキみ〜て)の全国4か所です。
会いに行くときは、公開状況と開館日を事前に確認すること、そして佐渡で野生のトキに出会ったらそっと見守ること。この2つを心にとめて、復活の物語を紡ぐ「日本の鳥」に会いに出かけてみてください。全国のほかの動物園を探すなら、こちらのガイドもあわせてどうぞ。



